大企業より中小企業の方がイノベーションを起こしやすい要素としては、社長のトップダウンですぐに実行に移すことができることが挙げられると思います。何を実行するかと言えば、新商品あるいは新製品の開発または新しいサービス創案となります。つまり、斬新なアイディアを実行に移しやすいということです。斬新なアイディアも常に仕事として取り組んでいる現場から想起しやすいことになるでしょう。このようなアイディアとその実用の実践という意味では、個人事業でも中小零細企業の社長でも幾度と経験もしているのでないかと思います。
ところが、そのようなアイディアの実践も含めて計画的に物事を進めている社長というと激減するのではないかと感じています。どちらかというと突発的に思いつきすぐ実践という社長が多いような気がします。特に来年の売上と予算といった数字の分野ではほぼ計画的に進めるという会社はないのではないでしょうか。それは、明日のことはわからないということでしょう。
事業計画も同様にあまりつくっている会社がないのが実情です。以前ストーリー戦略という概念が話題になりましたが、経営をストーリーとしてドラマ仕立てで捉えると、面白いもので起承転結のような流れがあるものです。大きく業績が上がった後に景気の落ち込みで逆境に陥ってしまったり、弛まない努力によって地道に売り上げが伸びていったり、得意先がなくなったと思ったらまた新たな展開がうまれたりと、経営も人生のように波乱万丈です。
中小企業であれば、より不安定ななかでの経営を余儀なくされることからも危機意識からの斬新なアイディアも必然的に生まれてくることなのかも知れません。そのような日々の業務のなかからの延長で思いついた新しいアイディアを形にすることを経営革新計画と呼びます。
そして経営革新計画を立案し、承認を受けることによってその事業計画が公のものとなり、金融や特許など国の支援を受けることができます。IT投資などのための費用の補助金の申請にも役立つものとなります。自己資金や借り入れだけでは多くの投資をしていくことは非常に困難なことですから、知識を活用して資金を得るという手法は今後の経営刷新にとても必要なことではないかと思います。
小企業の月次決算業務では税務ともに会計をベースとした経営支援も求められる領域となっています。中小企業の経営者は独自のノウハウやスキルを持っていますので、ここで求められることは数字からの意思決定支援といっても良いと思います。
ここでさらに重要となることが数値の読み取りになります。これは中小企業の経営者のなかでも、読み取りが得意な方、苦手な方と分かれますし、その数字の意味合い、定義づけとなるとさらにバラツキが大きくなることが実情であるでしょうが、その数字を的確に社長にお伝えして、今の経営状況を再認識していただき、この先の経営判断に活かしていただくことはとても大切な役割であると思っております。
経営は数値化され、その数値に基づいた思考をしていくことは金融機関や建設業の審査という側面からも必然的に求められているところとなっています。財務数値が良好であれば経営で必要となる資金が獲得しやすくなりますし、建設業の審査基準をクリアーしているほど、受注状況も良くなっていくものですから、やはり会社の財務数値を良好なものにしていくことは重要な経営上のファクターであると言えます。
それでは、どのようにしたら財務数値が良くなるのかということが次なるテーマとなり、これがわからないと、数字を見ていても話が進まないことでしょう。実態の経営から言えば、売上を上げるために営業をする、受注する、経費を節約してお金を残すということに尽きると思います。それを財務数値の面から見ていくとどうなるかということです。たとえば、損益計算書の最終利益を増やすためにはどうすればよいのか、貸借対照表の純資産を増やすためにはどのようにしていくべきか、あるいは自己資本比率はどのくらいの比率までもっていくべきなのか、そのためには借入金をどうしたらよいのか、設備投資はリースにするか購入するか、といった項目を勘定科目と数字とに論理立てて考えていくことができるということです。
誰しもがこのような論理的な思考をもとに計画と実行と反省をしていくことができれば、きっとさらに安定した強い経営の舵取りをしていくことが出来るようになると感じます。
(2019年4月)